双日株式会社は7日、首都圏マカティ市において進行中の同市内最大規模のオフィスビル再開発事業「The Yuchengco Centre」の入居者の募集を開始すると発表した。このプロジェクトは、2022年から同社がフィリピンの財閥ユーチェンコグループと共同で開発を進めており、2026年1月からオフィススペースの供用を始める予定で、日系企業の進出拠点として期待される。
▽地上27階の大規模オフィスビル
「The Yuchengco Centre」は、かつてマプア大学があった敷地に建設中。地上27階・地下3階、延べ床面積約8万3710平方メートルというフィリピン国内でも有数の規模を誇るオフィスビル。デザインコンセプトは、日本最大手の建築設計事務所である日建設計が担当しており、基準階の賃貸面積は約4000平方メートルに達し、柔軟なフロアプランを通じてテナントの多様なニーズに対応可能な設計となっている。環境配慮も重視され、環境配慮設計に関する国際的な認証である「LEED認証」と人の健康とウェルネスに焦点を当てた「WELL認証」の両方の取得を目指している。持続可能性と快適性を追求した最新の環境配慮型プロジェクトだ。
この再開発事業は、双日がユーチェンコグループの中核投資部門であるハウス・オブ・インベストメンツ(HI)と共同で推進している。双日は、2022年2月にHI傘下のサン・ロレンソルイーズ・インベストメント・ホールディングス(SLR)に約60億円を増資し、株式を取得する形でプロジェクトに参画。リーシング業務は、フィリピンの大手不動産コンサルティング会社リーチウ・プロパティー・コンサルタンツ(LPC)が担当する。
双日は、フィリピンにおける事業拡大の一環として、ユーチェンコグループを重要なパートナーと位置づけており、本プロジェクトは、両社の協業による新たな取り組みとして注目されている。
▽大型プロジェクトのモデルケース
双日は、これまでにも国内外でのオフィス、住宅、工業団地の開発・運営で豊富な実績を持つ。同社は、これらのノウハウを活かし、フィリピンでの社会インフラ事業展開をさらに拡大する方針を示している。同社はこれまでに、肥料製造、通信タワー、自動車ディーラーシップ、オートファイナンス事業や「Fuwa Fuwa」で親しまれるパン製造事業などを展開している。
一方、HIは、ユーチェンコ財閥傘下の非金融事業を統括する企業であり、1959年に設立された。1962年にフィリピン証券取引所(PSE)に上場し、建設、自動車販売、教育、医薬品、不動産、メモリアルパークなど多岐にわたる事業を展開している。同財閥が所有するリサール商業銀行(RCBC)などの金融事業を除いた広範な事業運営を担っている。
今回の「The Yuchengco Centre」プロジェクトは、HIと双日の協業関係をさらに深化させるものであり、今後のフィリピン国内における大型プロジェクトのモデルケースとして注目される。(青柳一臣)