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職業訓練センター

2000/11/26 文化・スポーツ
2人1組になってマッサージの実習に励む訓練生

腕磨く視覚障害者たち

 視覚障害者同士の親近感からか、互いに「カパティ」(兄弟)と呼び合って、手探りで相手の体に手を当て、習ったばかりの指圧を試みる。社会福祉開発省直轄「国立リハビリ職業訓練センター」の教室。一九五四年、ケソン市プロジェクト4に開設された同センターでは現在、目の不自由な男女十四人の訓練生がマッサージ師になる日を目指し、腕を磨いている。

 訓練期間は一年。午前七時から始まる午前中の授業は、マッサージや医学に関する講義と実技指導で、午後は四時半まで実技訓練。九カ月目からは、クリニックなどに派遣されて訓練生は現場で研修を受ける。

 午後の教室を訪ねると、蛍光灯の鈍い光の下で、訓練生が二人一組になってマッサージの実技練習をしていた。分からないことがあれば、四つあるベッドの一つにみんなが集まり、教官の指導を受ける。男女別に指導する教官二人も視覚障害者だった。

 教官の一人、ネルソン・ミリヤルさん(27)は指導を終えると、「困難にぶつかっても、それを乗り越えることに喜びを見つけなさい」と励ましていた。その言葉にうなずく訓練生全員が、マッサージ師として力強く生きることをミリヤルさんは願っている。

 「フィリピンでは視覚障害者の八割以上の人がマッサージ師として生計を立てており、マッサージ師の約六割が視覚障害者だ」と、女性担当のテレシータ・メンドーサさん(40)が説明してくれた。

 しかし、最近、働き口を失った健常者がマッサージ師になるケースが増えているという。「健常者が視覚障害者の職場を奪うことにならないか」。メンドーサさんにとって、そのことが一番気がかりだそうだ。 

 訓練生のほとんどは、独り立ちして自分のクリニックを持つのが希望。一回九十分のマッサージは平均三百ペソ。一日、三︱五人に施療すれば生活に困らないという。

 訓練生の一人で、明暗だけがわずかに感じられるというエルビン・エルコルテスさん(26)は、同期生九人と一緒にクリニックを構えるのが夢で、場所はパシッグ、マンダルーヨン両市の境にあるビジネス地区、オルティガスと、いまから決めている。

 「場所柄、ストレスのたまった会社員が多いでしょ。それにショッピングセンターも集中しているので最適だと思う」。「光ある未来」を語りながら、見えない目を細めていた。(栗田珠希)

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