新聞論調
The Tone of the Press
謝罪の必要断じてなし
中国漁船沈没事件
南沙諸島の領有権をめぐり中国がまたしても強気な行動に出た。昨年来の「漁業施設」建造、その増強に続き、今度はフィリピン領海を侵犯した漁船が沈没した責任は比海軍にあると主張している。
事件は五月二十三日、南シナ海スカーボロ礁付近で起きた。我が国海軍の艦船が領海侵犯の中国漁船三隻を発見。これを追跡したところ、艦船からの大波をかぶり漁船は沈没した。ところが中国政府は、艦船が意図的に追突したのが沈没原因と主張し、比海軍関係者の処罰と中国漁民への賠償を要求している始末だ。
この種の厚顔無恥ぶりは彼らの専売特許なのである。中国は隣人の領海を自由に航行させろと求めるばかりか、隣人の海洋資源を収奪する免許を与えよと言っているのだ。強盗に押し入ってけがをし、被害者の主人に手当ての義務ありと叫ぶに等しい。
この「盗っ人に追い銭」の要求に屈しかけたのがメルカド国防相だった。サンバレスからわずか百二十カイリのスカーボロ礁は我が国固有の領土である。この領海を侵犯した中国漁民に補償するなど決して口外すべきでない。これを許せば、コレヒドールが次のターゲットになりかねないからだ。
これは、我が国海軍の歴史に残るような事件ではない。だが、いかにさ細なジェスチャーとはいえ、フィリピン領海への明らかな中国の主権主張である。中国側の今後の動きに対して、我が国海軍にその任務を敢然と遂行させよう。(28日・インクワイアラー社説)
なぜ農業重視なのか
農業振興と貧困解消
五年の任期を残すエストラダ大統領だが、フィリピンはさらなる平和を達成し、進歩に向かって歩み続けることだろう。
大統領は、国民の多数が苦しむ貧困の軽減と市場重視の二つを共存させる政策を掲げている。アジア通貨危機の打撃から抜け出せずにいる国がある中、この政策ゆえにフィリピンがアジア諸国の先頭ランナーだという見解を、大統領が示した。
再生した民主主義と自由貿易の推進が、フィリピンが通貨危機後のアジアで一歩抜け出せた理由であり、貧困者のために農業発展に焦点をあてる努力を可能にしている。政策実現に不可欠なのは、効率よい官僚制だ、と大統領は強調する。
貧困解消と農業重視を政策の中心にすえる理由を、大統領は次のように語っている。
「貧困の解消は待ったなしの優先課題である。貧困は単なる経済的な苦悩、社会の病根だけではなく、国民の道徳心を掘り崩している。貧しいがゆえの精神構造ができあがり、国家の通貨政策にすら害を及ぼしている。貧困ゆえに成長する機会を失い、国家前進の妨げとなっている」
フィリピンの農業は科学技術や情報伝達技術の革新といった進歩に伴い、世界レベルでのグローバルな競争力を、身に付けようとしている。農業重視政策は、政府の農業政策を支持するすべての人々に刺激を与えるに違いない、と大統領は語っている。(28日・ブリティン社説)