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11月5日のまにら新聞から

故人を悼む日によせて 集団的意義としての比の万聖節

[ 651字|2023.11.5|社会 (society)|新聞論調 ]

(新聞論調)比における万聖節は、伝統や文化に根差すだけでなく、その集合的意義をもってより特徴的なものになっている

 万聖節の11月1日、多くの比人は故人をしのぶため墓地へ向かった。悲しみを和らげる感傷的な価値のある習慣や儀式としての万聖節は、親族や友人が集まり食事を共にし笑い合うことで、生きている人と故人が共通の思い出と愛によって結ばれる追憶の日なのだ。

 死者に敬意を表するこの伝統は重要な比文化の1つだが、最適な日は本来2日の万霊節ではと疑問に思ったことはないだろうか。

 比にカトリックをもたらしたスペインの植民地下での歴史的影響は大きく、スペイン人が伝えた万聖節をはじめとする習慣や伝統が、先祖崇拝に関連する比の土着文化と融合し、今日の比独自の伝統へ発展していった。

 万聖節は天国にいるすべての聖人に祈りを捧げる日。万霊節は信者であった死者の魂に祈りを捧げる日。死者の日とも呼ばれる万霊節よりも万聖節が比で重視されるのは、生者を導き守ってくれる聖人のとりなしを求め、精神的な旅路を振り返ることが奨励される日だからだと考えられている。

 また万聖節までの数週間は、食べ物の準備や墓の掃除、ロウソクや供え物の買い出しなど、家族が集まり責任を分担し、故人に対する最大限の敬意と配慮をもってこの日を祝うために集団で動く。つまり、それぞれの境遇に関係なく、同じ目的を共有する人々の間で個人を超えた一体感が生まれ、深い帰属意識を生み出す。そのため、歴史や文化、伝統に根差すだけでなく、この集団的な意義により、比の万聖節はより特徴的で際立ったものとなっているのだ。(3日・インクワイアラー、マニー・アンヘレス)

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