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12月4日のまにら新聞から

マントを着ない英雄たち 環境保護に取り組む比の若者たち

[ 659字|2022.12.4|社会 (society)|新聞論調 ]

今年の11月30日も、例年通り「ボニファシオ記念日」が祝われた

 今年の11月30日も、例年通り「ボニファシオ記念日」が祝われた。アンドレス・ボニファシオは、スペイン植民地支配下の19世紀、革命秘密組織「カティプナン」を結成し独立をかけて戦った国家の英雄として知られる。

 「英雄」と聞けば、革命や殉教、国際的な賞などが連想されるが、すべての英雄が象徴的なマントを身にまとっているわけではない。その典型例として、「環境保護」という言葉が生まれる前から環境保護に取り組んできたフィリピンの多くの先住民族が挙げられるだろう。

 最もよく知られるのは、故マルコス大統領の戒厳令下のカリンガ州で、先住民約10万人が立ち退きを求められた巨大チコダム建設計画の反対運動を先導したブット族の長老、マクリ・イン・ドゥラッグだろう。政府との闘争の末、彼らの犠牲をきっかけにダム計画は撤回された。

 さらに、エジプトで11月に開催された国連気候変動枠組条約第27回締約国会議(COP27)に参加し、気候危機を訴えたフィリピン代表団の若者らも忘れてはいけない。若者がたゆまぬ努力で示す勇気と希望はとかく伝染しやすい。各国で優先事項やビジョンが異なる中、交渉は円滑には進まず、悲観的になりやすい議題において、彼らは忍耐と抵抗の姿勢を示し続けた。

 彼らはマントを着てはいないが、現代の英雄と呼ぶにふさわしい。そして、英雄を英雄たらしめるのは1人ではない。私たちは気候危機を前に共に戦っており、進み続ける義務があるのだ。(11月29日・スタンダード、元環境天然資源省次官・アントニオ・ラビ―ニャ)

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