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7月4日のまにら新聞から

弱者への抑圧、根絶目指せ 言論の自由

[ 664字|2021.7.4|社会 (society)|新聞論調 ]

 表現の自由が民主主義社会の基盤であることは言うまでもないが、同時にこれほど論争の的になるものはない。個人の人権を理解する上で、人権は他者の権利によって制限され得ることを忘れてはならない。

 フィリピンなど立憲民主主義国の多くでは、表現の自由という法的権利は、その権利を侵害するような国家の行動からの保護を目的としている。国家による言論妨害を厳しく規制するのは、政策への批判を含め、国の目的に反する言論を弾圧する口実をできるだけ作らせないためだ。一方で、性、人種、階級への差別など、言論が弱者の抑圧に使われることもある。

 最も保護を必要とする人々を国家が守るために必要な基準や一貫したルールは簡単には定められないが、私の意見ではこの法的基準は不快感に基づいてはいけない。不快感はあまりに主観的かつ個人的で、国家による言論への介入の合憲性を判断する適切な指針にはならない。

 しかし抑圧的な構造がある時、不快感を感じることは不快な言葉が害を生み出していることを示す場合もある。

 ソーシャルメディアが過激な声を大きくできるようになったことで、ヘイトスピーチが注目されるようになった。完全な言論の自由が不快な言論を排除することになるという考えには、欠陥があると示されている。言論の場は平等ではなく、発言力や傾聴力も均等ではない。力の差がある立場を同一視はできない。

 国民のために尽力する政府の役割は、攻撃を違法とするよりも、弱者への抑圧を根絶することにあるはずだ。(6月29日・スター、司法次官 エメリン・ビリヤール)

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