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4月18日のまにら新聞から

ASEAN人権宣言 尊重を ミャンマー軍の弾圧

[ 642字|2021.4.18|社会 (society)|新聞論調 ]

 「トクハン」(戸別訪問による強権的な麻薬取り締まり)の国、フィリピンでは意外かもしれないが、東南アジア諸国連合(ASEAN)には、ASEAN憲章に盛り込まれた独自の人権宣言がある。

 2012年11月にカンボジアの首都プノンペンで採択された宣言は、世界人権宣言や人権に関する国際的な文書にならってASEANが作成した。非常に詳細で、市民としての様々な権利や平和への権利を守るため、加盟10カ国が協力することを約束している。

 ミャンマーで、民主的に選出された指導者アウン・サン・スー・チー氏がクーデターで失脚。全土で騒乱が続き、民主主義の回復を求めるデモに参加して死んだ人は今週、700人を超えた。

 殺りくはひどいもので、止めなければならない。遺体が積み重なっていく中、フィリピンは、軍事政権に国際公約を思い出させようと、ASEANの人権宣言を引用した声明を発表した。

 東南アジアは、比の独裁者フェルディナンド・マルコスをはじめとする権威主義的な指導者たちに統治されてきた地域であり、民主主義の模範とは言えない。比では今も、ドゥテルテ政権下の治安部隊による人権侵害が問題となっている。

 とは言え、東南アジアの人権状況は大きく改善されつつあり、市民の人権の尊重が経済発展をもたらしている。オープンな社会を目指すことが、国にとっても有益であることは、ミャンマーの政権も見てきたのだ。現在進行中の「大いなる飛躍の後退」により、この進歩を妨げてはならない。(14日・スター)

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