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10月18日のまにら新聞から

援助が容易に、事業応援を 国民ID制度

[ 677字|2020.10.18|社会 (society)|新聞論調 ]

 政府は2018年に成立した「フィリピンID法」に基づき、12日から国民ID制度の登録作業を始めた。政府発行の全IDを統合、全国民の単一公式IDカードを確立するのが目的だ。まず900万人を登録し、ドゥテルテ大統領が退任する2022年6月末までに9200万人への拡大を目指す。

 議会左派などの厳しい声、サイバーセキュリティー問題、汚職疑惑がなければ、登録は昨年始まったかもしれない。今年はコロナ禍も加わった。低所得層への支援金給付の混乱に大統領は激怒したが、ID制度があればもっとうまくいったはずだ。ソット上院議長もID法に迅速に対応しなかった執行部に失望。閣僚の突然の辞任は、この大失態が原因だった。

 事業の初期には、首都圏を除いて、感染低リスク地域の32州計664市町をカバーする。担当者は、対象住民の氏名、住所、性別、年齢、血液型などの情報を収集した後、タブレットを使って面会日を設定。実際に訪問し、指紋や写真を含む生体情報を取得する。来年早々には住民は真新しいIDの番号とカードを受け取る予定だ。

 政治家が推進する理由の一つに国家安全保障があるが、貧困層、少数民族、非識字者、出生証明書や銀行口座を持たない人々を社会的に包摂するという利点もある。最下層の人々を助ける必要がある時には、援助提供が容易になる。

 統一された個人情報が人権侵害につながる危険性を懸念する人もいるが、国家警察のカスコラン長官は「善良な市民ならば、恐れることは何もない」と言う。すでに2年遅れているが、国民IDは良い制度だ。事業を応援しよう。(13日・マラヤ)

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