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3月15日のまにら新聞から

予期せぬ事態に賢明な対処を 新型コロナウイルス

[ 655字|2020.3.15|社会 (society)|新聞論調 ]

 最近、米ニューヨークのマンハッタンを歩いていた時のことだ。中年の白人男性が中国人の老人に向かっていきなり「この野郎、この国から出ていきやがれ」と叫んだ。新型コロナウイルスをめぐる差別発言だった。私は言った。「何を言ってる。あんたは人種差別主義のくそ野郎だ」。すると、米国人の若者が駆け寄って来て言った。「あいつに立ち向かってくれて、ありがとう。ああいう奴から人々を解放するために俺はイラクで戦ったんだ」

 こういった差別は世界的に起きている。次の差別の対象はイタリア人になるのだろうか。私たちはパニックに陥らず、差別にも屈せず、この予期せぬ事態に賢明に対処しなければならない。

 米国は、中国の指導者に手を差し伸べて、共同でコロナウイルス対策のタスクフォースを設立することができたはずだ。しかし、米政権は、その代わりに、中国の独裁的な政治システムを攻撃し、米投資家と中国進出企業に米国に避難するよう促す声明を出した。今、世界は明らかな信頼の危機に陥っている。この原因の一部には、国家および世界的なリーダーシップに対する信頼の喪失がある。主要20カ国(G20)は、世界的な景気後退を防ぐための金融および経済戦略を考案するのに最適な立場にある。ウイルスをめぐる世界的危機の中で役割を果たすべきだろう。

 グローバルな信頼の回復には、多国間の努力が必要だ。そうしないと、個々の国はウイルス対策で独自の道を進み続け、世界経済、社会の回復までの時間を長引かせるだろう。(13日・インクワイアラー、ケビン・ルッド)

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