賭博推進政策はいいのか 中国人労働者めぐる事件増加
今月9日夜、1人の女性が2人組の男にいきなりバンに連れ込まれた。女性は叫び声をあげて抵抗しながらバンのドアを開けたものの、車はドアを開けたまま現場から立ち去った。
この事件が恐ろしいのは、暗闇で人通りの少ない場所で起きたのではなく、マカティ市の金融中心地であるパセオデロハス通りとペレア通りの交差点で起きたことだ。普段から車も多く、歩行者があふれている。目撃者らも異変に気付いたが、誘拐犯らが武装しているかもしれず行動を起こせなかったのだ。
事件後数日経過しても、警察は被害者と誘拐犯がともに中国人であると発表するのにとどまっている。犯罪者を追及する意気込みが感じられないのだ。
国家警察誘拐対策班によると、中国人が関与する誘拐事件が急増している。今年だけでも75件の誘拐事件が起きているが、うち42件が海外向けオンライン賭博業者やカジノに関連したケースだ。警察によると、うち27件は解決済みで、容疑者88人が逮捕された。
オンライン賭博で働く中国人をめぐる誘拐事件は、被害者が雇用主から十分な報酬を得られずに逃げ出したケースが多い。逃げ出した従業員が誘拐され元の職場に強制的に戻される。中国人観光客がカジノで使う金を高利貸しから借り、借金を返済できずに誘拐され、その家族に身代金が要求されるケースもあるという。
中国人労働者の増大によってフィリピン人は都市部で住宅賃貸料の上昇に見舞われている。また禁煙条例の違反行為などもよく見られる。そして中国人訪問者をめぐる犯罪の増加にも直面しているのだ。誘拐だけでなく雇用主から逃げようとして墜落死するなどの死亡事件、中国人や比人女性も含む売春などである。
そもそも中国で犯罪とみなされるギャンブルが比で合法化されているため多くの中国人労働者が移住してきた。中国人を標的にした犯罪が比人に向けられるかもしれない。オンライン賭博やカジノを政府が推進する必要があるのか、再考する時期だ。(14日・インクワイアラー)