歴史の真相を消すことはできない 相次ぐ慰安婦像の撤去
2017年12月にマニラ湾沿いに最初の慰安婦像が建てられた。第2次世界大戦期に日本軍によって性奴隷にされた比人女性たちのことを記念するものだ。しかし、翌年4月に日本の外務省が「極めて遺憾」と表明、像は撤去された。ドゥテルテ大統領もそのような像は民有地に建てるのであれば問題ないと発言したが、昨年12月28日、別の慰安婦像がラグナ州サンペドロ市のカトリック教会が経営する老人施設の中に建てられた。在マニラ日本大使館が「日本政府の立場と相いれず遺憾」と表明、2日後に像はまた撤去された。
比人慰安婦支援団体のリラ・ピリピーナは「日本政府はわれわれが戦争を忘れるよう要求している」と批判した。二つ目の像撤去で明らかになったのは、安倍政権が政府を挙げて公共の慰安婦像を消し去ろうとしていることだ。不都合な過去を思い出させ歴史的残虐行為を記念する物は消し去る必要がある。同じ論理でいけばユダヤ人大虐殺の現場にある記念碑も消し去る必要があるが、ナチス時代に対しドイツ政府はまったく違うスタンスだ。
1993年に当時の河野洋平官房長官は帝国陸軍が女性たちを強制的に軍慰安所などで働かせたことを認める談話を出した。しかし、安倍政権は歴史を修正しようとしている。安倍首相は歴史に対し右派的考えを持っており、超右派の日本会議に属している。彼は歴史教科書から慰安婦問題の記述を修正する運動も率いた。また彼の母方の祖父は岸信介元首相だ。岸信介は戦時中、ナチス・ドイツを称賛し、満州国から強制労働者を集める条約を結ぶなどしている。東条英機内閣で商工相になり戦後、A級戦犯として裁かれている。
慰安婦問題は政治化させてはならない。慰安婦像は歴史の真相を表現し、道義的権利を訴えているのだ。真実が日の目を見るまで、一つの像が撤去されてもまた別の場所で別の像が建つだけだろう。(14日・タイムズ、ダン・ステインボック)