国軍を聖人扱いする大統領 関税局を統制下に
麻薬密輸に関与したとして国税局を国軍の下に置くことを大統領が決めた。その措置に対して多くの疑問が出てくる。その措置は違憲ではないのかという疑問がまず出てくる。次に、国軍の統制下に置くことではたして密輸と汚職が撲滅できるのかという疑問だ。
現憲法の第7条18項に大統領は最高司令長官でもあり、無法な暴力や反乱を防ぐために国軍を投入することができると定められている。大統領は今回、関税局の「無法状態」に対する措置だと弁明している。もしそうだとすれば、大統領は自ら全土に戒厳令を布告することもできるではないか。
違法薬物の密輸を阻止するために強硬手段を取る必要があるという政府の説明には同意できるが、国軍の統制下に置くことには同意できない。大統領は国軍内部でも汚職が横行しているのを知らないのだろうか。国軍では幹部が新しい役職に就くたびに「お土産」や「お弁当」と称して金銭が配られているのを忘れたのだろうか。世論調査でも国軍が政府機関の中で最も汚職がはびこる機関の一つだと認識されているのだ。
筆者が取材していた1950年代や60年代でも関税局で新局長が就任するたびに、組織に入り込んでいるシンジケートが「お祝い」を行い、局長にまとわりついて最低6カ月間にわたる「新人研修」を行っていた。局長が思い通りに動かなくても、密輸者たちは内部に協力者を持っており、密輸は行われるのだ。ファエルドン元局長やラペニャ前局長らは異動されたものの、昇進すらしているのだ。
また今回、国軍兵士に取って代わられることになった関税局の中間管理職らは、国家公務員であることを大統領は知っているのだろうか。国家公務員を罷免するためには適切な手続きを踏まなければならないのだ。給与を倍増するなど大統領はなぜそこまで国軍兵士や警察官らだけを聖人扱いするのだろうか。(10月31日・スタンダード、エミル・フラド)