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7月6日のまにら新聞から

汚職と暴力、分断になじむ国民 ドゥテルテ大統領の成果

[ 779字|2018.7.6|社会 (society)|新聞論調 ]

 ロケ大統領報道官は7月下旬に予定されているドゥテルテ大統領の施政方針演説について、「自分の心に近い事柄を国民に直接、語りかける新しいスタイルになる」と説明した。ドゥテルテは確かに多くの事を成し遂げた。しかし、彼がそれらを成果として考えているのかについて私は確信が持てない。

 ドゥテルテのいわゆる麻薬戦争によってこれまでに2万3千人を超えるフィリピン人が殺されてきた。うち50人以上が未成年者だ。ドゥテルテはこれを価値ある成果とみなすのだろうか。また、インフレ率が上昇し続け、ペソ安が進行し、税制改革法の施行により物価高も顕著だ。この状況をフィリピン国民が歓迎していると考えているのか。

 そして目玉政策のインフラ促進政策「ビルド、ビルド、ビルド」。実際はほとんどの事業が過去の政権から引き継いできたものだ。しかしこの政策の中で最も重要でインパクトがあるのは西フィリピン海で建設されている人工島事業だろう。これはわれわれからの明白な許可なしに中国が建てたものだが、私たちは仲裁裁判所による勝利判決を得ている。そこで、次のように考えてみよう。つまり、中国はこの人工島をBOT(建設・運営・移譲)契約で請け負って建設していると。中国が完成させ、そのまま運営し、そして一定の期間が過ぎればフィリピンが中国にその所有権を無償で移譲する仕組みだと。

 ドゥテルテの一番の成果は、汚職と暴力、分断と排斥、そして偏執症というやり方を国民になじませたことだ。国民は、汚職官僚が次々と再任命されても黙っているし、サマール島で発生した国軍と警察部隊の誤認による交戦で大量の死者が出ても気にしない。ハリリ・タナワン市長が大勢の人の前で射殺されたのに平然とした国民の対応はどうだ。このような今日の国民の精神状態こそドゥテルテの真の成果だ。(4日・マラヤ、ジェゴ・ラグラジオ)

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