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6月11日のまにら新聞から

空爆以外の道も マラウィ住民の声

[ 743字|2017.6.11|社会 (society)|新聞論調 ]

 マラウィ市の戦闘が始まった時、世論は国旗と国軍のもとに集った。イスラム教徒の避難民の一部は自身の命を守るため、そして国軍の過激派掃討作戦に協力するためすすんで避難した。しかしこれらの避難民が、空爆を進める政府の致命傷になっている。ある避難民は後悔している。たとえ民家に国軍の銃弾を受けても修理するのは可能だが、完全に破壊する空爆は受け入れることができないと。

 問題をさらに悪化させるのは、住宅再建を助けるはずの政府から避難民が何の保証も聞いていないことだ。破壊された地域では、元の家の印象だけを残して、帰る家はなくなるといううわさが流れている。空爆による市街地の破壊で避難民は国軍を嫌いになっている。

 軍隊の本能では兵士を危険にさらすよりも、まず発砲と破壊を行い、質問をするのは後回しにする。1945年のマニラ市街戦を戦ったベイトラー将軍は「建物が破壊されるのを嘆く所有者がたくさんいたとしても、爆撃機があれば大きながれきをさらに小さくさせるかもしれない」と述べた。

 これが軍隊の心理だ。一度作戦が始まったら、意識はすべて戦闘のために投入される。軍隊の犠牲を最小にし、戦闘を最短で終わらせるために。市民の犠牲は正当化されるが、その結果として長引く戦闘でも人命の犠牲は少なくなると。

 ミンダナオ地方の市民社会からは、国軍が任務を加速させるにつれ、犠牲者の数が予期しない悪影響をイスラム教徒と世論に与える危険性も表明された。

 イスラム教徒が過激派に対して立ち上がり、命の危険を冒しながらキリスト教徒の市民を守り救出する。そんな話が生まれているのがマラウィ市だ。マラウィ市を解放するには別のやり方があるという彼らの声を聞くべきではないだろうか。(7日・インクワイアラー)

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