経済損失は最小か 戒厳令の後遺症
ドゥテルテ大統領が布告した戒厳令は、フィリピン南部の治安と秩序の回復に必要不可欠な判断だった。一部政治家の間では、危機的状況は南ラナオ州マラウイ市に限定されているため「戒厳令は行き過ぎ」と批判する声も上がったが、戦火の拡大を未然に防ぐ必要な措置だったという解釈が大半だ。
しかし、この状況は経済的損失を抜きに語ることはできない。最初に考えるべきは観光産業への影響だ。各国政府はミンダナオ島への渡航自粛を勧告した。この結果、観光省が推奨していた大統領の故郷、ダバオ市も打撃を受けるだろう。
もう一つの懸念は日用品の価格上昇である。現段階では価格統制が効いているが、治安情勢により物資の流れが止まれば、需給バランスが崩れて物価上昇は免れない。
ただし、経済全体への影響はそれほど大きくない。マラウイ市が位置するイスラム教徒自治区の経済は国内総生産(GDP)の0・6%にしか満たず、比全土17地域で最も小規模だ。中央銀行のテタンコ総裁も影響は一時的にとどまり「最終的にはプラスに働くだろう」と楽観視した。
最も重要なのは、ミンダナオ地方の治安と秩序の回復のため、戒厳令を最大限利用することだ。長期戦にもつれ込んではいけない。投資家はそれほど忍耐強くない。彼らにとってはフィリピン以外にも投資先はあるのだ。
ミンダナオ地方における反政府勢力との紛争は歴代政権下で有効な解決策が導き出せなかった。故にドゥテルテ大統領の政治手腕に期待が集まるが、テロの脅威が他の地域にまで及んだ場合、大統領は戒厳令をビサヤ地方だけでなく、比全土に拡大する可能性に言及した。それは憂慮すべき事態であり、現実問題となれば経済的リスクとはまた別の深刻な状況に陥る。(2日・インクワイアラー)