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9月4日のまにら新聞から

教育を武器にせよ 現政権の麻薬戦争

[ 730字|2016.9.4|社会 (society)|新聞論調 ]

 ドゥテルテ政権下の麻薬戦争により、2カ月間で1900人が殺害された。このまま継続されれば、政権が終わるまでに6万8400人が殺されることになる。しかし、そのような作戦をとっても麻薬問題は根絶しないだろう。複雑な社会問題に対しあまりにも単純なアプローチを取っているからだ。

 フィリピンは幸運にもどこの国とも国境を接していない島国。沿岸警備隊や関税局が取り締まりをきちんとすれば麻薬の供給原を絶つことは容易なはずだ。むしろ問題なのは麻薬を必要とする側、つまり需要の問題をどう解決するかなのだ。

 麻薬使用を防ぐためには政府だけでは無理だ。やはり家庭や教会、学校、その他の組織も巻き込んだ包括的なアプローチが必要だ。現在の麻薬との闘いで欠けている視点だろう。もちろん麻薬常習者の更正事業も必要だが、常習者の6割は2年以内に再び麻薬に手を出すとのデータもある。だから大切なのは子どもたちが麻薬に手を染めないよう、教育や家庭の場でしっかりと教えることではないか。

 ドゥテルテ政権が進める麻薬戦争は警察による作戦であり、死体の数が正否を判断する材料となっていて、まるでベトナム戦争当時のようだ。南米諸国の麻薬戦争でも同じことが起きた。末端の麻薬密売人が殺されるものの、リーダーには取り締まりの手が及ばないのだ。麻薬密売ルートが減ったとしても、逆に末端の販売価格が上昇するだけで、摘発を逃れた麻薬組織が暗躍することになるだけだ。イタチごっこなのである。

 ドゥテルテ氏が麻薬取引を根絶させたければ、もっと多面的な対策を取るべきだ。虐殺でこの闘いに勝利することは無理だ。家庭や学校、教会などと連携すべきである。(1日・インクワイアラー、ヘルメネヒルド・クルス氏)

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