大統領の成果とは 就任後の50日間
ドゥテルテ大統領就任後50日に合わせ、ニューズウィーク誌に掲載されたフィリピン新政権についての記事は、新政権の成果ではなく、違法薬物撲滅運動で「比の路地に流れた血」についてだった。
いくら政府が麻薬撲滅で成果を上げていると主張したとしても、国際社会からの視線は、常に国家の評価を下げるものである。大統領は、比が抱える多くの問題を、麻薬撲滅運動で流された血で覆い隠すことはできない。
選挙運動中から、インフラ整備にも力を入れると明言していた大統領だが、大統領就任後の50日間、以前と同様に首都圏鉄道(MRT)と軽量高架鉄道(LRT)は故障を繰り返し、通勤中の人々は足止めを食らってきた。もちろん首都圏の渋滞も解決されることはなく、インターネット上で人々は「6時間も渋滞に巻き込まれた」と愚痴をこぼす。
筆者も、首都圏中心部からマニラ空港へ行くだけで2時間渋滞に巻き込まれ、その上、滑走路混雑の問題を抱える同空港からは、いつものように離陸ができず、深夜1時まで3時間も待つ羽目となった。もちろん首都圏の渋滞は一朝一夕で解決できる問題ではない。しかし「比に変化をもたらす」という触れ込みで大統領に就任したからには、国民は最も身近な問題である渋滞問題のいち早い解決を望んでいるのだ。
ラモス元大統領を特使として中国に送り比中関係改善を図り、共産勢力や各武装勢力とも話し合いの場を持とうとするなど主導的姿勢は評価できるだろう。ただし、麻薬撲滅で射殺された膨大な数の容疑者の血で、大統領が最初の50日で成し遂げた成果が国民からは見えにくくなってしまっているだけなのかもしれない。(22日・スター)