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12月14日のまにら新聞から

事前情報なしの旅行 観光ブーム

[ 687字|2015.12.14|社会 (society)|新聞論調 ]

 マニラ空港で銃弾所持事件が発生しているにもかかわらず、旅行者の増加はとどまることを知らない。ガイドブックや旅行雑誌、ブログ、ウェブサイトなどには、旅行にいざなう情報があふれている。書籍には「死ぬまでに行きたい場所」のタイトルが踊り、雑誌では最も素晴らしい海岸、都市を特集している。

 そこで、人々は旅行先で「一番に見るべきもの」を事前に確認し、制覇しようとする。他者の助言に従うことは悪いことではない。しかし、あまりにも助言に忠実すぎることは、同時に危険もはらむ。

 まず、世界を見る視野が狭くなり、決まった場所しか訪れなくなる。インドならニューデリーとタージマハル、フィリピンならパラワンとボラカイといったように。パリのルーブル美術館では「モナリザ」の周囲だけに観光客が群がり、他の素晴らしい名画は忘れ去られている。

 ニューヨークでは自由の女神があるリバティー島に行くために観光客が何時間も順番待ちしている。ブルックリンの街を歩いた方が「自由」とは何かを実感できるというのに。

 一方、メディアによって危険とされ、旅行者が滞在先の候補に入れない地域がある。例えばミンダナオ地方は危険とされているが、私からすればいくつかの場所は首都圏よりも安全だ。アフリカは広大な大陸にもかかわらず、エボラ出血熱の感染がアフリカ西部で拡大、あたかも大陸全体で広がっているような印象が強まった。

 世界は「チェックリスト」ではない。現実は予期していなかった出会いにあふれている。世界には想像以上の美しい場所があることに、多くの人が気づくよう願っている。(9日・インクワイアラー)

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