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8月10日のまにら新聞から

国益優先できるか 政治的世襲禁止法案

[ 730字|2015.8.10|社会 (society)|新聞論調 ]

 任期内最後となる施政方針演説でアキノ大統領が、政治的世襲禁止法案の早期可決を呼び掛けた。演説は「腐敗した一族、個人が公選職を無期限独占している」と挑発的だったが、現職の正・副大統領とも政治的世襲と深い関係があることを忘れてはならない。

 アキノ大統領は、国内屈指の政治力、知名度を誇るアキノ、コファンコ両家の間に生まれた。アキノ政変(1986年)以降、両家からは大統領2人、大勢の国会議員、知事、市長、政府高官が輩出された。妻と3人の子どもが首都圏マカティ市長や上・下院議員を務めてきた、ビナイ副大統領も政治的世襲を代表する人物。最近の演説では、憲法の多選制限撤廃を提唱、「本人が飽きるまで公職を続けさせるべきだ」と公言した。

 施政方針演説を聴いた国会議員の多くも、家業を継がせるように、子ら近親者に公選職を引き継がせて権力を維持してきた。テレビ局が2013年に実施した調査によると、20〜40年連続で公選職を独占する一族は少なくとも55。北イロコス州バナ町では、アバディリャス一族が43年間、町長ポストを独占してきた。

 政治的世襲の「恩恵」を受けてきた国会議員らは果たして、法案に賛成するだろうか。その答えは、大統領を支えるべき政権与党所属議員らの否定的反応を見れば明らかだ。演説翌日からある議員は「審議時間が足りない」と言い、別の議員は「政治的世襲の定義についてコンセンサスが形成されていない。有権者の『リーダーを選ぶ権利』も制限してしまう」と述べた。

 大統領演説は、憲法で政治的世襲の排除をうたいながら、世襲禁止法が現在も制定されていないことの是非、「家族や身内より国の利益を優先できるか」を議員らに問うている。(6日・インクワイアラー)

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