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7月20日のまにら新聞から

本当の慈悲 障害者週間

[ 727字|2015.7.20|社会 (society)|新聞論調 ]

 人類学者や多くの専門家による論文を読んでみると、フィリピン国民に共通する美徳は「思いやり」や「慈悲心」とは分析していないことが分かる。

 比人の物書きやジャーナリストですら、読者に対し国民性をこう誇る。ホスピタリティーにあふれ、信仰心に厚く、家族思いで、親切で寛大。そして高齢者を敬う……。

 しかし、見知らぬ人にまで慈悲の心を持っているのが比の国民性だと指摘する有識者は極めてまれだ。それこそが本当の意味での心の優しさである。己のためでなく、見知らぬ人に対してこそが。

 大半の比国民は物乞いに背を向けることはない。海外へ出稼ぎに行く医師や看護師は、最も温かい介護精神の持ち主と評判だ。だが、本当だろうか。

 慈悲の心は他人の苦しみに敏感であり、その苦しみを和らげようと突き動かされ、救いの手を差し伸べる。もし我々が本当に慈悲の心を持っているならば、なぜ多くの地方住民は貧困層で、なぜ子どもが素っ裸で物乞いをしているのか。

 国会議員の90%が汚職の温床とされる優先開発補助金を受け取る深層心理は何なのか。なぜ貧困層の子どもから食料を奪うも同然の支出促進計画制度(DAP)問題が起きたのか。

 比国民の非情さを示す根拠があるとすれば、それは病院や教会も含め、大半の公共施設に障害者用の施設が存在していないことだろう。経営者の考えが障害者にまで及んでいないのは火を見るより明らかだ。車いす利用者のための緩やかなスロープすらない。

 17日から障害者週間が始まる。厚生省は障害者問題の周知を目指した様々な催し物を行う。障害者のためのスポーツ大会、障害児の両親に向けたフォーラムなどだ。厚生省の担当部署にお祝いを述べたい。(17日・タイムズ)

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