ビナイ政治の実態 マカティ市政混乱
首都圏マカティ市の市政問題はさまざまな点で、国の政治システムが機能不全であることを例示している。司法は常に政治権力の介入に対峙(たいじ)し続けなければならない。公人は権力を私有化し、真実を見つけ出すのは難しい。不透明な会計を指摘すると、「個人もしくは一族への私的な攻撃」とみなされる。
しかし、国民はこの状態を許容している。こういった国民の考えが、一部の政治家一族が世代を超えて権力を独占する状況を生み出している。政治家一族は身内で政治の要職を占有する、綿密で精巧なシステムを作り上げている。この国における公共サービスとは市民の権利ではなく、一部の政治家一族の特権である。
フィリピンでは、政治家が自分の都合で合法・非合法性を判断するため、司法の権威は失墜。政治家一族はまるで財産を相続するかのように、公職を身内で牛耳っている。
ビナイ副大統領が最も明白な例だ。副大統領はエドサ革命以降、マカティ市長に選出され、1998年まで市長を務めた。息子を未来の跡継ぎに据えることを計算し、市会議員に選出。妻エレニタ氏が98年から2001年に市長を務めた後、市長の座に返り咲いた。
自身が副大統領選に出馬した際は、息子が市長選、娘アビゲイル氏が下院選にそれぞれ立候補し選出された。13年には別の娘ナンシーを上院選で擁立、当選させた。
混乱するマカティ市政で、独立した司法の判断を無視し市長側を援護するビナイ一族の様子から彼らの政治特性が垣間見ることができる。もしビナイ政権が誕生したら、司法は政治にないがしろにされ、政治は私物化されるだろう。(2日・インクワイアラー、ランディ・ダビッド氏)