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12月22日のまにら新聞から

犯罪犠牲者に正義を 米兵身柄引き渡し

[ 731字|2014.12.22|社会 (society)|新聞論調 ]

 ルソン地方サンバレス州オロンガポ市で10月中旬、性転換したフィリピン人男性が殺害された事件で、米海兵隊一等兵、ジェセフスコット・ペンバートン被告が殺人罪で起訴された。

 比政府は当初、デリマ司法長官を通じて被告の身柄引き渡しを要請した。しかし、ゴールドバーグ駐比米大使が「比政府側の要請を拒否する」と公言したのを機に、同長官は「訪問米軍地位協定(VFA)に関する米側の解釈は正しい」と発言を一転させた。

 同長官の最初の声明は「被告が起訴された今、比政府は身柄引き渡しを要請する」という内容だった。しかしその直後、「すべての司法手続きが終了するまで、被告の身柄は米側にあるとする米大使の見解は正しい」という内容にすり替わってしまった。

 米大使が言及したVFA条項には「罪に問われている米兵の身柄拘束権は、司法手続きが終了するまで米側にある」と記載されている。一方、被害者の弁護士が指摘したVFAの別の条項によると、比政府による同被告の身柄引き渡し要請は可能とされている。 

 比政府の公式見解は1998年8月にさかのぼる。当時、クエバス司法長官は、「特別に重要なケースについて、比政府は身柄拘束権を主張する米側の要請を拒否することができる」と述べた。

 問題の核心は、あいまいな協定の解釈をめぐる議論ではない。凶悪な犯罪の犠牲者に対し、正義が下されることである。米政府は市民権をことさら主張するが、世界中に派遣している多数の米兵が人権侵害問題に直面した途端、その主張は米兵に有利なようにねじ曲げられるのが実情だ。揺るがない事実。それは比国内で殺人事件が起きた場合、容疑者は比の法律に沿って裁かれなければならないということだ。(19日・トリビューン)

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