お粗末さに失望 大統領弾劾申し立て
下院に相次いで提出された2件の大統領弾劾申し立てには失望されられた。なぜなら、申し立ては時期尚早と言わざるを得ず、略奪罪で起訴された上院議員らによる「自分勝手な現政権批判」に基づいた弾劾理由の論理にも無理があるからだ。
申し立ての背景には、支出促進計画(DAP)制度の違憲認定を受けた突発的衝動のようなものがあったのだろう。しかし、弾劾理由となっている最高裁判決は、政府側が再考を申し立てたため、現在も未確定。今後、長官を含む判事13人が同意した違憲判断自体は覆らないだろうが、判決の一部が修正される可能性は残されている。修正されれば、弾劾理由も一部変更を余儀なくされる。
弾劾理由には論理の飛躍、無理もある。例えば、左派系団体が提出した1件目の申し立ては、最高裁の違憲判決を受けて「DAP制度の公金はすべて大統領の裁量予算だった」と決めつけた。2件目は、略奪罪で起訴、逮捕された上院議員の「DAPの公金が議員買収に使われた」との主張をそのまま引用。賄賂性を裏付ける証拠・証言も確保しないまま、略奪事件主犯の自分勝手な言い分を弾劾理由にした。
また、申立人の左派系団体関係者らは、違憲判決に反発したアキノ大統領を「独裁」、「圧政」と非難しているが、これも的外れの感が強い。マルコス政権下、司法は大統領のいいなりだったが、今回の違憲判決は司法の独立が保たれていることを明確に示した。過去の独裁下と現状が、明らかに異なっているにもかかわらず、軽々しくこれらの言葉を使うべきではない。大統領の任期が残り2年を切る中、弾劾申し立てなどを通じてDAP批判を続け、現政権の掲げる「汚職撲滅」という大目標の達成がおろそかになるのもいかがなものか。(24日・インクワイアラー)