偽りの賛辞 横行し続ける人身売買
米国務省が発表した人身売買に関する年次報告書で、比人海外就労者(OFW)の過酷さを軽視するアキノ現政権の実態が浮き彫りになった。
報告書によると、現政権下における経済成長はOFW約1千万人の送金に基づいているのだが、アキノ大統領はグッド・ガバナンス(良い統治)の成果だとすり替え、自賛する。
毎月の送金額が20億ドルを超え、大統領はOFWを「英雄」と持ち上げているが、一歩外に出れば、雇用主の手によって迫害を受ける未熟な労働者でしかない。白人の奴隷制度の人身売買の被害者でもあり、自国の政府からも捨てられた奴隷でもある。報告書が指摘する通り、人身売買が悪化する諸悪の根源は、この国にはびこる汚職体質にある。
現政権は人身売買の払しょくに努める意欲を強調するばかりで、失策の責任を取るつもりは毛頭ない。政府の対応不足は、労働力の輸出を加速させる。
雇用機会につながる国内産業を育成し、労働市場を改善する絶対的な政策はない。特に、法執行機関による人身売買への加担は根強い問題であり、汚職のまん延は、人身売買を斡旋する悪徳業者の免責を可能にする。
腐敗した法執行機関は賄賂を受け取り、人身売買目的のOFWを違法に出国させる。時には警官が性産業の関係者から恐喝するため、無差別に取り締まることもある。
母国でまともな生活を送るための機会に恵まれず、海外での仕事探しを強いられる1千万人のOFW。その実態は19世紀前半の奴隷労働制を想起させる。そんなOFWたちを「英雄」と祭り上げるのは、現政権発足以来、健全な雇用環境を提供できなかった失策をもみ消す、偽りの賛辞にすぎない。異国の地で働く自国民の苦悩は、偽善的指導者の無能の結果である。(26日・トリビューン)