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1月20日のまにら新聞から

信仰心の恐怖

[ 723字|2014.1.20|社会 (society)|新聞論調 ]

異例のミサ中断

 一度触れれば、死を宣告された患者でも奇跡的に完治すると信じられている黒いキリスト像。フィリピンのカトリック教徒の信仰心は年々あつくなっているようだが、時には命を危険にさらすこともある。

 9日に行われたブラックナザレ祭に登場した黒いキリスト像は、一瞬にして会場を異様な雰囲気に包んだ。出発地点のキリノグランドスタンドでは、ミサが始まる前から信者が警官の制止を振り切り、われ先にと山車の聖像目がけて駆け込んだ。このため、ミサは中断された。テレビ画面に映し出されたこの模様は、恐怖以外の何物でもなかった。

 17世紀初頭に比に持ち込まれた聖像は山車の上で不安定に揺れ始め、危うくひっくり返るところだった。映像を見たカトリック司教協議会の議長は「こんなのは本当の宗教ではない」と、怒りをあらわにした。

 ランディー・ダビッド氏はコラムで、皮肉混じりにこう書いている。

 「信仰心の核心を理解するまで私は相当苦労してきた。キリスト像への信仰心は、日常生活に根付いた国民の強い信念を示している。一方で、これほどまでに恐ろしい力を持つ信仰心を、豊かで健全な社会を築く上でいかすことができないのだろうか」

 視聴者は、嘆願する信者の群れに、それほどの変化を感じないかもしれない。

 だが、現場では祭りの終了後、信者が殺到した通りには数百トンにも上る大量のゴミが残されていた。空腹感やめまい、あるいは窒息しそうな状況を耐えながら信者らが見せた信仰心とは一体何だったのか。信者たちに街を汚す権限はなく、その責任は問われてしかるべきである。彼らはヒステリーと信仰心の強さを同一視してはいまいか。神は気分を害されたに違いない。(14日・インクワイアラー)

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