急ぎすぎるな
MILF和平交渉
アロヨ前政権下、政府はモロ・イスラム解放戦線(MILF)との和平交渉で、「父祖伝来の土地認知」の覚書でもめ、MILFが武力攻勢を強めた結果、交渉は中断した。和平交渉は再開され、政府とMILFは13日の和平準備会合で「富の共有」で合意した。
政府側交渉団長によると、鉱物資源の探査・開発で得る収益で、バンサモロ新自治政府の資源配分率は75%となった。石油や天然ガスなどの資源探査・開発による収益は、折半となった。政府は当初、ミンダナオ地方のイスラム教徒自治区を前例に、より大きな配分率を政府側に確保したい意向だった、と伝えられる。「富の共有」の合意を受け、ラマダン(断食月)が明ける8月8日にも、和平最終合意の調印も可能かもしれない。
どんな和平合意でも、歓迎すべき前進だが、悪魔はいつも細部に潜む。合意した富の共有は現実的だろうか。ラモス政権下の1996年、モロ民族解放戦線(MNLF)との間で和平協定が締結された。予定する新自治政府の領域のかなりが、MNLFが影響力を持つ領域と重なる。自らの分派と政府の合意を、MNLFが受け入れるだろうか。
反政府勢力の武装解除が、包括的和平の成立までにできるかどうかは不明だ。新自治政府による開発と投資が進むならば、交戦は止み、平和が戻るだろう。
ミンダナオ地方は資源が豊富だ。鉱物・エネルギー資源の開発には大企業の強力な投資が必要になる。投資家には、武装集団による爆破や交戦、誘拐・拉致からの安全を保証しなければならない。ここ3年間、政府は何度もMILFと和平交渉の努力を重ねてきた。過去の教訓は、単に世界に向けた成果を気にして交渉を急ぐことはない、ということだ。和平枠組み合意の内容を実施できる機会は常にある。(15日・スター)