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12月17日のまにら新聞から

次世代に公的支援を

[ 729字|2012.12.17|社会 (society)|新聞論調 ]

パッキャオ選手の敗北

 ボクシングの国民的英雄、マニー・パッキャオ選手=下院議員=が米ネバダ州ラスベガスで、メキシコのマルケス選手に敗れた。4回目となった両者の因縁試合は、パッキャオ選手が顔面にパンチを受け、マットに突っ伏すという決定的敗北に終わった。

 本人は試合後、現役続行を表明し、国内のファンも復活を望んでいる。しかしながら、パキャオ選手自身が以前「ボクサーの中には、ノックアウト負けから立ち直れない者がいる」と認めたように、完全復活への道は平坦ではないだろう。

 英雄の復活を願う一方で、われわれが取り組まねばならない課題がある。それは、国の名誉を高められる次世代のボクサーを育てることだ。選手は、時間の経過と共に熟成するワインのようなものではなく、決して年齢に比例して成長しない。いかなる世界王者であっても、いったん研さんを怠れば、自分より若くて強いライバルと相対することになる。

 他国のプロボクサーと同様、パッキャオ選手は自力で頂点を極め、フィリピン人が世界チャンピオンになれることを身をもって示した。公的機関などのサポートはほとんどなかったわけだが、政府はパッキャオ選手の成功をたたえるだけでなく、国際試合で勝負できる、潜在的能力を持った若者の発掘と支援を進めるべきだろう。

 支援対象は、ボクサーだけではない。国内で活躍するアスリートの大部分は、世界レベルの能力を維持するためのトレーニングに、十分な時間や資金を費やせない状況下に置かれている。また、国民の多くが「スポーツには、学業や仕事を犠牲にする価値がない」と信じていることも、スポーツ振興を鈍らせ、メダル獲得が有望な選手の多くが「雇用不安のない国軍兵士」という現実を生んでいる。(14日・スター)

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