関係悪化を象徴
大統領特使の訪中
西フィリピン海(南シナ海)南沙諸島における領有権の主張がアキノ大統領から託された親書の内容だったとしたら、ロハス内務長官の中国派遣は一体何だったのか。
ロハス長官は帰国後の記者会見で「習近平国家副主席が国家主席に就任するのに備え、中国側との話し合いに道筋を付けるためだった」と説明した。
指導者の交代が迫っている今は、何もできないということなのか。あたかも、胡錦涛現国家主席は相手にしたくないと言っているようで、現国家主席に対する侮辱とも取れる発言だ。
大統領とロハス長官は、外交も中国問題も不得手だと、気づいていないようだ。領土問題に関する中国の政策はトップの交代で変わるものではない。中国の政治体制は、政変で様変わりするわが国とはまったく違う。
ロハス長官が領有権問題の行き詰まりを認めたように、今回の特使派遣は成功しなかった。国際問題に発展させないという方針は、米国の介入を含めた多国間交渉を破棄するものにほかならない。
先の会談では、北部ルソン鉄道事業の契約中止問題の方が、より多く話し合われたようだ。だから、ロハス長官は「中国が融資の一部返済を求めている」と発表したのだ。中国によるフィリピン産バナナの輸入規制も議題になった。中国の規制は続いている。大統領らは次期国家主席の就任で、両国関係が変化すると、本気で思っているのか。
ロハス長官は、習副主席との関係を構築する点で、訪中の目的を達成したと自賛した。習副主席が国家主席に就任した際に接見する確約を現段階で得る必要があるのだろうか。このような実態こそ、まさに比中関係の悪化を象徴している。(27日・トリビューン)