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7月18日のまにら新聞から

現政権の「二重基準」

[ 734字|2011.7.18|社会 (society)|新聞論調 ]

司教らへの車寄贈問題

 共和国憲法は政教分離の原則に基づいて、公金あるいは公的財産が宗教団体や宗教上の目的に使われてはならないと定めている。

 しかしながら、現憲法が制定されたコラソン・アキノ政権下から現在に至るまで、数え切れない宗教関係団体が「社会サービス」や「貧困撲滅」のため、比慈善宝くじ協会(PCSO)や比娯楽ゲーム公社(PAGCOR)の支援を受けてきた。宗教団体側もちゅうちょすることなく、「公的支援」を同協会などに求めてきた。

 歴代大統領と同様、アキノ大統領も今年1月、ベンゲット州バギオ市で活動するカトリック司教に、PAGCORからの支援実施を打診した。これに対し、司教側は「私やバギオ市関係者は公営カジノを含む賭博運営に反対している」と申し出を断った。

 司教にとっては「賭博という堕落的行為で得られた金は、善行目的には使えない」ということなのだが、大統領は何ら悪びれることなく、PAGCORの公金を宗教的活動に使おうとした。さらに、PCSOも現政権下で宗教関連団体への救急車寄贈を続けている。

 にもかかわらず、アロヨ前政権下にカトリック司教らに贈られた高級車がやり玉に挙げられた。アキノ大統領に任命されたPCSOのフイコ会長は、会計検査院の監査結果を武器に「公金は宗教団体のために支出されてはならない」と違憲性まで指摘した。

 ここで特筆すべきは、前政権下の「悪行」や「憲法違反」を批判しながら、現政権下での支援申し出や救急車寄贈を問題にしない「二重基準」だろう。さらに、コラソン・アキノ〜エストラダ政権下で行われた宗教団体への公的支援が、批判対象から外されている点も公平性を欠いている。(11日・タイムズ、リカルド・サルド氏)

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