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2月14日のまにら新聞から

沈黙は「美徳」

[ 727字|2011.2.14|社会 (society)|新聞論調 ]

裏金問題を導く慣習

 国軍という組織がレイエス元国軍参謀総長の拳銃自殺によって救われることはない。その他の国軍幹部が自殺を図る代わりに腐敗した慣行に関する真実を明らかにすれば、救いの可能性はある。同元参謀総長は自身の方法で国軍を救済したとする見当違いな発想を抱く国軍幹部が大勢いるようだが、機密情報が墓場に持ち込まれることで改善される組織はない。

 死者に敬意を表するという比国民の文化からか、同元参謀総長の自殺を受け、国軍裏金問題の調査に対して消極姿勢に転じた国会も救いようがない。結局のところ、誰が国会議員なのかを考える必要がある。彼らは同元参謀総長の親類であり仲間、知人ではないのか。

 今回の事件によって国会調査の真の目的が失われるのであれば、この国に変革が訪れることはない。真実の追究は死者への冒とくには当たらない。

 裏金問題の調査を終結させるため、同元参謀総長の自殺を国会議員自身らの責任だと非難し、自殺こそが国や組織を救う方法だと祭り上げるのは愚の骨頂だ。1億人近い比国民が全員自殺すればこの国は汚職から救われたことになるのか。

 遺族の悲しみや、裏金問題で同元参謀総長を追及しようとした告発者への憤りは理解できる。死を悼む時間を遺族に与えることも必要である。しかし、汚職根絶のために欠かせないのは、実態を暴露しようとする告発者の排除が腐敗体制を成り立たせているという根底にある事実に行き着くことだろう。

 下院聴聞会では、外務省までもが国連援助資金の使途不明金問題に関与している疑惑が浮上した。なぜ、このような不祥事が相次ぐのか。それは沈黙こそが「美徳」という慣習が存続しているからにほかならない。(11日・トリビューン、ニニェス・オリバレス氏)

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