政治の機能不全
乗っ取り事件報告書
バス乗っ取り事件に関する比政府調査委員会による調査報告書公表のタイミングが、残念ながら報告書の内容以上に議論の的になった。事件の責任所在が焦点となるはずが、「報告書はまず中国政府に公表する」と発表したことで、政府は国民の神経を逆なでした。
重大な疑問は、アキノ政権は香港政府から命令でも受けていたのかということだ。香港の人々に謝っただけでは足りないのか。不利な立場に置かれた大統領府が、謝罪の意を再度伝えなければならない状況に追い込まれていたのか。
報告書は報道各社に届く以前に、すでに在比中国大使館に届けられていた。大統領府は同じ内容のものを政府系広報誌に全文掲載すると約束した。要するに比国内向けの対応が後回しになったのだ。
「報告書の内容は、調査委設置に至った国家警察の人質救出作戦での失態と同様にお粗末」。ラグマン下院議員のこの発言ほど、適切な表現はない。これまでに判明したところでは、数人の高官名が出ている以外、報告書に新事実は何一つない。すでに指摘されている「容疑者」が訴追勧告の対象になっているだけだ。
報告書は重要な点に触れていない。運命の8月23日における「最高指揮者不在」に対する責任についてだ。この社説で既に指摘したが、愚かにもアキノ大統領は同事件の最中に前面に出ないよう助言を受けていた。その責任は明らかに大統領報道班にある。報道班は適切な助言が最も必要とされる場面で、その機能を発揮できなかった。
報告書の公表時期に関しても、同報道班は大統領を説得し、中国政府への公表優先に反対すべきだった。今回の事件で比政府は政治の機能不全ぶりも国民の目の前にさらけ出してしまった。(21日・タイムズ)