PALの汚点
操縦士の集団辞職問題
フィリピン航空(PAL)操縦士の集団辞職は、同航空会社自身が生み出した危機であろう。操縦士と経営陣は、この問題の与える影響が自身らだけでなく社会一般に及んでいることを認識すべきだ。
辞職した操縦士25人が高給を求めて海外を目指すのに反対する者はいないだろう。PAL経営陣は「操縦士の夢を妨害したくはないが、彼らには会社側との契約および乗客に対する道義的責任がある」と主張した。
目先の問題は契約上の義務。代わりの操縦士の訓練期間を含め、6カ月前には通知する必要がある。辞職した操縦士はその意味で説明責任がある。
長期的な課題としては、PALの経営手法だろう。より高い給与は必ずしも転職の理由にはならない。そこには労働環境も伴う。社が生き残るための人員調整、人手不足が原因の過労など。操縦士の辞職は、それ自体が労働環境の不満を物語っている。これらの問題が解消されない限り、操縦士だけでなく航空整備士や客室乗務員まで集団辞職することになりかねない。
国際的な反響に至っては、経済的な問題どころではない。例えば、大手通信社は「操縦士辞職に伴い、PALの欠航便は増加の一途」という見出しで記事を配信した。比航空全便が欠航したと思う読者もいるだろう。この見出しだけでPALの評価、国のイメージまでもが損なわれるのだ。
別の通信社は「乗客のみなさまおはようございます。本日は晴天になるもようですが、われわれは操縦士が不足しています」というユーモアを交えた書き出しの記事を配信した。
アジアで最古の航空会社が冗談のネタに使われている現実。この記事が与える衝撃は、経済への影響どころではない。(4日・インクワイアラー)