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6月7日のまにら新聞から

宮殿に住むべき理由

[ 712字|2010.6.7|社会 (society)|新聞論調 ]

アキノ議員の住居問題

 当選が確実視されるアキノ上院議員が大統領任期中、マラカニアン(大統領)宮殿ではなく、両親から受け継いだ平屋住宅で質素な生活を送りたいという。この信念には一理あり、感心に値する。この考えは、自宅に住み同宮殿には「自動車通勤」することを望んだ、同議員の母親、故アキノ元大統領を思い出させる。と同時にアロヨ大統領が宮殿で続ける「帝王生活」とは好対照をなすものだ。

 しかし、独裁者マルコスが20年間、現大統領が9年間にわたり住んだ同宮殿には特別な意味がある。同宮殿は国家の象徴なのだ。

 アキノ議員が自宅をどれほど快適に思っても、大統領就任後はその「快適地」から出なければならない。その理由が少なくとも3つある。第1は、厳重警備の必要性と、同議員邸のある住宅地の近隣住民に襲い掛かる悪夢である。非業の死は同議員一家に無関係ではない。同議員の自宅が容易に攻撃対象になり、それを防ぐ警備強化は近隣住民にとり不便極まりない。

 第2は、大統領には自己犠牲が必要ということだ。現、前大統領と異なり、母親がそうだったのと同じく、同議員のこれからの6年間を逃れられない「責務」と納得すべきだ。同宮殿に住むことは同議員が払う犠牲の1つである。

 第3は、同議員がマラカニアン宮殿に住むことで、宮殿に付きまとう悪印象を払しょくすること。同議員は国民の代表として同宮殿を国民の手に取り戻さねばならない。同宮殿での質素な生活は同議員が、汚職のない政治の中心にある質素さを回復する好機であり、汚職を排することで高官たちの模範にも成り得る。そして、正当に選出された大統領として、国民を同宮殿に堂々と迎えることもできる。(2日・インクワイアラー)

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