新聞論調
「好機」生かせ
欧州連合の行政執行機関、欧州委員会がこのほど、比航空会社の連合域内への乗り入れを禁止したが、現在、同地域に乗り入れる比航空会社がないため即座に影響は出ない。しかし、この禁止措置は比がアフリカのスーダンと同じ航空安全レベルにあることを意味し、放っておくわけにはいかない。
欧州委員会は比の航空行政機関が航空機の管理や機体チェックなどの監督で「重大かつ継続した義務不履行があった」と断じ、今回の措置に踏み切った。比政府が改善努力を行ってきたことを認めながらもである。
最近、比民間航空局の局長にクシ前マニラ空港公団総裁が就任した。アロヨ大統領によって政治任命禁止期間の直前に滑り込みで任命されたのだが、この先、4年間の在任期限中に、同局長はさまざまな分野で多様な問題を解決していかなければならないだろう。
今回の乗入れ禁止措置は航空会社ではなく、あくまで航空の安全を確保すべき航空行政機関に対する制裁であった。また、今回の措置によって、観光立国を目指しながらも近隣諸国に遅れを取ってきた比政府にとってさらに一撃を与えるものでもあった。
比では汚職疑惑で開業が遅れるなど、予定通りに開業できた空港施設は1件もなかった。首都圏以外の地方空港では動物が滑走路の上を自由に行き来し、飛行機の進路上でたこが揚がるのもよく見られる。
2003年にはマニラ空港の航空管制塔が政府高官の汚職を訴えた当時の民間航空局長と海軍将校によって占拠された。2人はラジオ番組で投降を示唆したが、結局、治安部隊に射殺された。欧州の外交筋は比政府が禁止措置を十分に乗り越えられると楽観している。比政府には今回の措置を国際基準を満たす努力を強化するための「好機」と捉えてほしい。 (5日・スター)