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12月14日のまにら新聞から

政治的権門と私兵団

[ 717字|2009.12.14|社会 (society)|新聞論調 ]

大量虐殺事件の根源

 ミンダナオ地方マギンダナオ州の大量虐殺事件を生んだ政治、社会的根源は4つある。

 第一に挙げるべきは、全国、地方レベルの選挙で当選者を多数出し、権力と影響力を行使する「政治的権門」の興隆だ。現憲法は「公職への機会均等」を保証するとともに、「法律で規定される政治的権門を禁ずる」とうたう。しかし、立法府は有力権門に支配され、権門規制に関する法律はいまだ制定されていない。

 第二は、武力を保有する政治的権門や地方有力者、そして軍・警察以上の武装を誇る私兵団だ。特に選挙時、有権者を脅して特定候補者への投票を強制する私兵団は非常に有用な存在となる。アロヨ大統領も2004、07年の統一選で、同一族と私兵団の恩恵を受け、その見返りとしてイスラム教徒自治区(ARMM)に年間十数億ペソの予算を投下し、同一族による公権力の私物化を黙認した。一方、「大統領の秘密」を握った同一族側は公金で大隊規模の私兵団を整備し、豪邸や高級車を買いあさった。

 第三、第四の根源は、私兵団による官給武器の使用と「罰を受けない文化」だろう。同一族の自宅などからは、軍・警察用とみられる大量の武器類が押収されたが、これらは軍・警察から横流しされたのか否か。

 何をしても容認される「罪を受けない文化」はマルコス政権の戒厳令下で芽を出した。アキノ政変(エドサ革命)以降も続き、メディア関係者や活動家らの殺害が急増したアロヨ現政権下でさらに深刻化した。01年の現政権発足以降、少なくとも99人のメディア関係者が殺されたが、逮捕された容疑者はわずか5人。未解決事件の蓄積がさらなる殺人事件を生み、そして今回の大量虐殺を生んだのだ。 (8日・インクワイアラー)

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