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11月30日のまにら新聞から

大統領も同罪

[ 719字|2009.11.30|社会 (society)|新聞論調 ]

マギンダナオ虐殺事件

 マギンダナオ州で起こった大虐殺事件から3日間、容疑者が明らかであるにもかかわらず、なぜ迅速な逮捕に至らなかったのか。国民は疑問に思っている。アンパトゥアン町長が投降したが、アロヨ大統領と同一族の事前交渉があった。同町長は殺人罪で起訴される方針だが、容疑を否定している。問題は、今後証人が命の危険を顧みず真実の証言をするのか、あるいは脅迫によって宣誓供述書を取り消すのかだ。

 どちらにせよ、60人近くが犠牲になった比史上最悪の事件への政府の対応は、政治的味方ならば法違反者さえも地位を与えられる現政権の統治体質を反映している。2006年の政権転覆計画発覚時には、国軍は暴徒や大統領を非難する者たちをあっという間に逮捕したではないか。当時の非常事態宣言は正当な理由を欠く逮捕を生み出したが、同じ宣言でも今回アンパトゥアン一族に対してそれは行われなかった。

 この虐殺は明らかにジェノサイドであり、現政権の遅々とした対応は人権に関する国際法違反では有罪に相当する。この大虐殺はアロヨ大統領の政治処理範囲を超えており、比が地球上最悪の無法地帯と化した今、問題の処置を国際社会に持ち込むべきだ。

 アロヨ大統領の支援なくして同一族がここまで権力を持つことはなかった。対立する政治家一族同士の抗争という側面もある。しかし、最重要容疑者は大統領の政治的協力者として知られ、ゆえに同一族は政府介入の恐れなく私兵を築き、地元の政治権力を掌握できたのだ。マギンダナオ州に放たれた怪物はアロヨ大統領の創造物であり、彼女が決着をつけるべきだ。大虐殺は決してただの2家族間による抗争ではない。これは明らかに人類に対する犯罪である。(27日・トリビューン)

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