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新聞論調

[ 702字|2009.4.20|社会 (society)|新聞論調 ]

「ワンワン」への警笛ーシアプノ夫人の帰郷

 東ティモールの国会議長夫人で比人政治学者、ジャクリーン・アキノ・シアプノ氏が「お忍び」で帰国した。マニラ空港からタクシーで長距離バスターミナルに向かい、夜行バスに乗って約五時間をかけてパンガシナン州に到着。トライシクルに乗り換えて実家にたどり着いた。本紙は「謙虚な姿勢」に注目し、新聞の一面に掲載した。比政治家の「ワンワン文化」に対するアンチテーゼとしての価値があったのだ。

 青年期から外国で暮らし、米カリフォルニア大学バークレー校で博士号を取得した夫人は「ワンワン」が何たるかを解さないかもしれない。「ワンワン」とは、「要人」が手にするサイレンの音を語源とし、サイレンを鳴らして交通規則を無視して渋滞を切り抜けることを意味する。

 「夫人の帰国は私的な旅行であり、公式訪問とは異なる」と反論する要人の姿が目に浮かぶ。しかし、夫人は車を借りてサイレンを鳴らして帰郷することもできたにもかかわらず、バスやトライシクルを選んだ。公職者の威厳を感じるではないか。

 「東ティモールは貧しい小国であり、比較できない」との反論も、的を外している。比は豊かな国との幻想から公用車の総数、地方の副町長専用のボディーガード、閣僚用の護衛車︱︱などに巨額の予算が支出されている。

 われわれは、公職者に公共交通の利用を要求しているわけではなく、「過剰な威厳」の見直しを迫っているだけだ。

 「シアプノ夫人は公職者ではない」との反発もあるだろう。しかし、比では世襲が常態化しているが、公職は永久職ではない。シアプノ夫人の飾らない姿勢からは、比政治家の「腐敗指数」が浮き彫りにされる。(16日・インクワイアラー)

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