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3月30日のまにら新聞から

捜査当局の人権侵害

[ 715字|2009.3.30|社会 (society)|新聞論調 ]

報道陣への容疑者公開

 フィリピン国家警察の規則は、逮捕した容疑者を報道陣の前に公開することを禁じている。しかし、この規則はあまり実行されていないうようだ。

 ベルゾサ国家警察長官はこの規則を守らせるべきだ。同長官が副長官時代の二〇〇八年初め、人権侵害との非難を受けてこの規則を取り入れようとした。

 同長官は「報道陣への容疑者公開は、判決が確定するまで無罪と推定されるべき人権を侵害している」との認識を示した。さらに、アジア人権委員会(事務局・香港)は、この「悪習」が推定無罪の原則を規定する共和国憲法に違反していると指摘、公開中止を比政府に要請した。

 しかし、人権委員会などからの指摘に反発姿勢を示している警官もいる。それは、報道陣への公開によって、容疑者を一般国民に認識させ、被害者からの告訴を促す結果につながるためだ(比では被害届および告訴が出されない場合、公判維持が困難になる)。

 ところが、国家捜査局(NBI)はこうした動きに全く無頓着だ。NBIはこのほど、首都圏マニラ市トンドで大規模な覚せい剤製造所を摘発、台湾人三人を包括的薬物取締法違反の容疑で逮捕した。NBIは台湾捜査当局から密造の専門家を含むこの三人が比へ入国するとの情報を入手、内偵を進めていた。

 NBIはこの三人を報道陣に公開した。カメラマンたちは、「DETAINEE」と書かれたTシャツ姿の三人に向かってシャッターを切った。なぜ公開してしまったのか。NBIは、容疑者の人権を規定する共和国憲法を尊重していないのか。

 テオドロ下院議員らは二〇〇五年、容疑者公開を禁じる法案を提出した。いまこそこの法案の是非を議論し、可決する必要がある。(23日・タイムズ)

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