沈黙は偽善的同意だ
子どもの性的搾取
二〇〇八年暮れ、バタアン州出身の少女二人を救出するため、ソーシャルワーカーらがパンガシナン州アラミノス町を訪れた。二人は十三、十四歳。アラミノス町内の売春宿兼飲み屋で働かされていた。「警察が少女を救出してくれる」という期待は裏切られ、飲み屋は家宅捜索前に閉鎖状態となり、少女らの行方も分からなくなっていた。
この出来事は、人身売買業者や売春宿、飲み屋の経営者は治外法権状態にあることを物語っている。売春仲介の場となっている飲み屋は市長や町長から正式な「営業許可」を取得しており、買売春規制という意味では自治体関係者も国会議員らも無力な存在と言わざるを得ない。
これら子どもを標的にした性的搾取を、観光産業が促進している側面も見逃してはならない。国内性産業で働かされている十八歳以下の未成年は八万人以上とされ、欧米やオーストラリアなどから押し寄せる年間百十万人もの男性観光客からアングラな外貨を稼ぐ道具とされている。
政府関係者や民間業者にとっては、子どもや比人の尊厳よりも観光業から得られる利潤の方がずっと重要なのであり、金融危機に伴う不況でさらに多くの子どもたちが学校を去り、一家を支えるため性産業へ押し込められることになるだろう。
子どもを取り巻く状況が悪化する状況下、教会と地方自治体、地域住民の性産業に対する「道徳的怒りの欠如」には驚きを禁じ得ない。比国内のあらゆる自治体、教区に売春宿・飲み屋があるにもかかわらず、異を唱えるデモや教会主導のキャンペーンは起こらない。「何も見ない、何もしない」という沈黙は偽善的同意と同然である。(1日・タイムズ、シェイ・カレン神父)