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12月22日のまにら新聞から

大統領の日課

[ 729字|2008.12.22|社会 (society)|新聞論調 ]

利用されたOFW

 アロヨ大統領の日課となっている「記念写真撮影」はどのように行われるのか。世界同時不況の影響を受けて台湾で解雇された比人海外就労者(OFW)数千人のうち、百五人がこのほど帰国、マラカニアン宮殿を訪問した。

 集まったOFWたちは政府からの支援策に期待した。うち四人のOFWは大統領と握手を交わし、写真撮影をした。しかし大統領は足早にその場を立ち去った。

 現場にいた女性OFWは「(報道陣の)カメラが回り始めると、大統領は姿を現した。カメラの前で支援金額の書かれた紙を渡され、いったんその場が終了すると、手渡された物を返すよう言われた」などと当時の状況を振り返った。

 彼女たちは、自身が支払った航空運賃や残りの契約期間の問題などについて大統領と話がしたかったという。

 大統領府は総額二億五千万ペソ分の支援パッケージを表明した。しかし彼女たちに渡されたのは冊子の入った手提げ袋だけ。中には、社会保障制度に関するCD、労働雇用省関係機関のパンフレットなど。

 OFWたちが裏切られたと思うのは言うまでもないだろう。「わたしたちは仕事がない、借金もある。一番心配なのは子育てだ」。

 しかしこれが、貧困層のために汗水流して懸命に働くイメージを持たせる大統領の実像なのだ。

 大統領の中に「経済危機」という言葉はない。それは、十分な改革を実施し、経済危機を乗り切れるとする事実無根の主張の基に成り立っている。

 今回の事例で判明したことは、大統領はOFW百五人が求める生活改善への希望について何も考えていないということ。四人を驚かせたのは、初めて大統領府の写真に自身の姿が写ったことだけだ。大統領にとっては日課でしかない。(15日・トリビューン)

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