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7月28日のまにら新聞から

任期切れを待つ

[ 728字|2008.7.28|社会 (society)|新聞論調 ]

秘策なしの大統領

 国民は、アロヨ大統領の貧困撲滅と称して打ち出されている政策が、全国で拡大している貧困の軽減につながっていないことをよく知っている。国民は、大統領の「付加価値税(VAT)還元政策」が掲げる甘い約束の実態も分かっている。国民は決してだまされはしない。その結果が、大統領職務遂行に関する満足度調査で、一九八六年以来で最悪のマイナス三八という評価になって表れた。

 甘い約束とは貧困層への現金支給、学生へのローン、バスやタクシーなどに対する液化石油ガス(LPG)へのエンジン改造費補助などだ。同政策の総支出額は年間で百六十億ペソにも上るが、それで国民の尊敬、信頼、親近感を得られるのだろうか。大統領は楽観してはならず、すでにその評価は回復不能の状態にある。大統領は任期終了の二〇一〇年までサンタクロース役を演じるだろうが、物価は収入を上回る速度で高騰し、国民を飢餓状態から救い出すのは容易ではない。

 中央銀行は物価上昇がこのまま来年半ばまで続くと予測している。現行のインフレ率は九%台を超えた水準で、この状態が今後一年間続けば、国民は収入の二〇%を失うこととなる。

 この国の厳しい経済状態は八〇年代初頭以来、初めてのことであり、専制政治を行ったマルコス元大統領は、悪化した経済に危機感を募らせた国民の怒りに触れて倒れた。

 それに比べれば、アロヨ大統領は元大統領よりまだ恵まれている。憲法規定によると、アロヨ大統領の任期は一〇年までで、国民は力で退陣させなくても、アロヨ大統領が二十四カ月後には過去の人になると思っているからだ。秘策を持ち合わせていない同大統領が今後できることは、特に何もせずにじっとして、任期終了を待つことだけだ。(22日・マラヤ)

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