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6月2日のまにら新聞から

虚飾だった経済成長

[ 722字|2008.6.2|経済 (economy)|新聞論調 ]

GDP成長率

 第一・四半期の国内総生産(GDP)成長率の大きな落ち込みは、世界経済の減速や原油価格高騰のせいではない。同期の成長率は五・二%と過去三年間の第一・四半期と比較し最低だった。国家統計調整委員会(NSCB)によると、減速の主要な原因は政府支出の減少である。政府の消費支出は前年同期が九・五%増だったのに対し、今年は一%減となった。NSCBは正直に、政府が昨年の国政選挙で与党の勝利を目論み巨額の支出を実行したと認めている。アロヨ大統領が過去三十一年間で最高と自賛する昨年の成長率七・三%は選挙向けに洪水のようにあふれたマネーによって達成されたことになる。

 政府は、経済活性化のために支出を増やす必要があるという方針を明らかにしたが、その原資はどこに求めるというのか。国税局、関税局は徴税目標を達成できておらず、政府には借金を増やすか、資産売却の二つの選択肢しかない。しかし、政府は昨年、資産を総額九百億ペソも売り払い、残る資産を売っても、手に入るのは昨年の三分の一にも満たないだろう。

 三兆九千億ペソもの債務を抱えながら、大統領は国家がさらに借金漬けになっていくのを全く気にかけていないようだ。政府は今年は外資が着実に流入しているから外国から借金する必要はないと公約したばかりなのに、最近、総額五億ドルの借入方針を発表した。

 アロヨ大統領は、財務省が今年の財政赤字が最低でも七百五十億ペソになると予測したため、年内の財政均衡を断念した。この先に見えるのは、大統領が付加価値税の増税で切り抜けたとする財政危機の再発だ。しかし、大統領は任期終了の二〇一〇年まで新たな増税はないと確約している。大統領の前途は厳しい。(30日・トリビューン)

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