新移民残日録
「手数料2割は普通」汚職を助長する文化
太平洋戦争終結以降、歴代政権の大部分はセンセーショナルな汚職事件を起こしてきた。大統領選があるごとに、汚職は争点の一つとなり、野党のリーダーらは政府の汚職を追及した。しかしながら、野党政治家もいったん政権を手中に収めると、汚職に手を染めた。
マルコス政権下では汚職問題に、人権侵害と「罰せられない文化」という問題が加
わった。汚職で私腹を肥やした権力者は権力を維持するがために人権を侵害し、違法行為を罰すことのできない文化は汚職をさらに助長した。この悲しいサイクルが数十年間、続いてきたわけだ。
周知の通り、汚職は経済・社会的発展を阻害し、そのツケは貧困層に回る。世銀の推計によると、一九七八—九七年の二十年間、比政府が費やした「汚職のコスト」は四百八十億ドルに上るという。公金が政治家や公務員のポケットに入らず、適正に使われていれば、どれほどの道路や橋、校舎などを整備できたことか。
これだけ長期間、汚職問題に苦しみながら、汚職罪で刑務所へ送られた大物政治家はいない。確かにエストラダ前大統領は略奪罪で有罪判決を受けたが、判決から六週間後、一日も刑務所に入ることなく特赦を受けた。汚職に手を染めている公務員らは特赦により、大いに勇気付けられたことだろう。
ブロードバンド網構築事業の不正受注疑惑で証言台に立ったロサダ氏は暗闇に差し込んだ一条の光のような存在だ。しかしながら、ロサダ氏のような人物をしても、この国の現実は「事業受発注で二割の『手数料』は普通」と言わせてしまう。言うまでもなく「二割の手数料」は違法かつ反道徳的で税金泥棒以外の何物でもない。 (12日・インクワイアラー)