奇術師のトリックか
約10年ぶりの財政均衡
財政均衡がアロヨ現政権の掲げる目標より一年早く達成される可能性が出てきた。実現すれば約十年ぶりの「快挙」となるが、経済アナリストらはあくびをしながらこのニュースを聞いたようだ。一体なぜなのだろうか。
一︱十一月期の国税局収入は六千四百七十億ペソ、関税局収入は千九百二十億ペソで、税収総額は目標額を五百五十億ペソも下回った。つまり、財政赤字を生む根本的問題は解決されていない。にもかかわらず、財政均衡実現の可能性が出てきたのはなぜか。歳入欠陥を埋める財源はどこにあったのだろうか。
答えは公的資産の切り売りである。アロヨ大統領は一月以降、まるで赤字続きの家計を補うために家宝を売り払う家長のごとく、政府持株などを売却してきたのだ。十一月だけでもエネルギー関連の政府所有株を四百七十億ペソで売却し、単月としては過去最高となる五百四十一億ペソの黒字を計上させた。
確かに、投資家の信頼を得るために財政均衡の達成は必要不可欠だ。しかしながら、経済分野の成果により、悪行や権力乱用が正当化されるわけではなく、さらに「財政均衡」の秘密を知ってしまったら、とても大統領に合格点などやれない。
「財政均衡の達成」により、現政権は「比は繁栄へと向かっている」「大統領はすぐれたエコノミスト」などと経済優先政策の成果をアピールするだろう。しかし、そのツケは二〇〇八年に必ず回ってくる。質入れする、あるいは切り売りする資産はもう手元にない、「財政均衡」は、すぐれたエコノミストの指導力がもたらしたものでは決してなく、奇術師のトリックのようなものである。(21日・マラヤ)