新聞論調
警察の越権行為−記者に手錠、連行事件
首都圏マカティ市で起きたホテルろう城事件が収ったら、一部の警官には黒板に「私は取材中のジャーナリストに手錠を掛けません」と千回、書かかせるべきである。記者たちを警察の検挙行動の現場から排除する方法はほかにいくらでもあるはずだ。マルコス政権の末期ですら、警察は催涙ガスや放水を使うのに事前警告していた。
警察の行動が終了した後になって、何の目的でホテル内に残っていた記者を検挙し、手錠をはめた上で連行したのか。警察は報道関係者を拘束したものの、首謀者の一人、ファエルドン海兵隊大尉すら捕まえていない。
連行された首都圏警察本部で、拘束された記者たちは釈放してもらう前に身分証明賞の提示と書類への署名を求められた。国家警察は、報道陣を装ったトリリャネス議員の共犯者たちがいないことを確認したかっただけだと言っている。ファエルドン大尉は女装していたともいわれる。だが、夜中から夜明けまでの外出禁止令が解けても、政府はファエルドン大尉らの身柄を確保でなかった。政府の手に残ったのは、狩り出され、手錠をはめられ、警察のバスに押し込まれる報道関係者の姿をとらえたビデオ記録や写真で、その映像は世界中に流れた。
これらの映像は、数十人に上るジャーナリスト殺害事件で集中砲火を浴び、大統領の夫君があまたの記者を名誉毀損で告訴したことで非難されているアロヨ政権にとって一番、望まない物ではないのか。こうした背景があるからこそ、記者が現場で職務を遂行していただけというならば、警察も上からの命令に従ったのみだなどという言い方が出てくるのである。今回のホテル攻防戦は、国家警察に情報の自由な流通について貴重な教訓を与えたはずだ。 (1日・スター)