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10月8日のまにら新聞から

取り扱い注意の爆弾

[ 706字|2007.10.8|社会 (society)|新聞論調 ]

疑惑と前中央選管委員長

 「罪を認めることになる」と辞任の可能性を重ねて否定してきたアバロス前中央選管委員長がついに辞任した。本人いわく「いわれのない委員長個人に対する攻撃から中央選管を守り」、「弾劾発議の審議から下院を解放する」ためという。

 アバロス前委員長を辞任へ追い込んだブロードバンド網構築事業受注疑惑では、デベネシア下院議長の息子やネリ前国家経済開発庁長官らが前委員長からわいろ提供の申し出を受けたと国会で証言した。さらに、これらを裏付ける複数の国会議員証言もあった。これに対し、前委員長自身は「(同事業を受注した)中国企業の幹部らとゴルフをし、クラブハウスで会合を持った」と認めながらも、わいろ提供などの汚職疑惑は一切否定してきた。

 疑惑否定を続けた末の辞任表明には、したたかな計算があったとみられる。計算の要素は①中央選管委員長としての信頼失墜②長期間を要する弾劾発議の審議③二〇〇八年二月に迫った定年︱︱などで、職務と弾劾審議の継続というリスクよりも辞任という安全策を選んだ。

 辞任により弾劾は回避された。しかし、上院は受注疑惑の調査を継続する姿勢を示し、アバロス前委員長を行政監察院に刑事告発する動きもある。さらに、野党勢力は前委員長を取り込んで疑惑の全容を暴露しようと試みるだろう。前委員長の顧問弁護士によると、「壁に追い詰められれば(全容を)話さざるを得ない。(前委員長は)橋まで来れば渡る」という。現政権にとって前委員長は「取り扱い注意の爆発物」であり、大統領府の住人は「橋へ近づけない方法」を考えるあまり、眠れぬ日々を送っていることだろう。

(2日・インクワイアラー)

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