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1月29日のまにら新聞から

夢は抹殺できず

[ 692字|2007.1.29|社会 (society)|新聞論調 ]

アブ最高指導者の死

 アブサヤフなど比較的新しいイスラム過激派組織が生まれた背景には、イスラム最大勢力、モロ民族解放戦線(MNLF)やイスラム急進派、モロ・イスラム解放戦線(MILF)による独立運動の挫折がある。

 一九七〇年代に反政府活動を本格化させたMNLFは二十年以上に及ぶ武力闘争の末、九六年に比政府と和平協定を結び、分離独立に代わって「自治路線」を選んだ。しかし、現実は自治とはほど遠い状況で、歴戦のMNLF幹部らは今や影同然となってしまった。幹部の多くがアフガン義勇兵として戦ったMILFも、エストラダ前政権下で主要拠点の多くを国軍に奪われ、「自治領の確立」という夢を砕かれた。

 両組織の政治、軍事的挫折は、若い構成員やイスラム教徒をテロという安価なゲリラ戦へと駆り立て、アブサヤフやイスラム過激派組織「ラジャソライマン運動」を生んだ。さらに、オサマ・ビンラディン容疑者の「憎悪のイデオロギー」と米政府の圧力により、イスラム教徒固有の土地を取り戻すという夢は、地域全体に広がるイスラム国家樹立という妄想へと変質していった。

 この妄想は一見、非論理的な野望のようだが、その背後にはイスラム教徒居住地域の貧困など厳しい現実がある。抑圧者と罪のない第三者を区別できないテロリストらと話をするつもりはない。しかし、テロ組織と同じ非論理的手法で、テロリスト数千人を殺しても、彼らの夢を消し去ることはできない。テロ行為を続ける若者たちを狂気の際から引き戻す方法。それは、彼らが受け入れ可能な現実世界を作り出すという曲がりくねった長い道しかないのだ。(24日・タイムズ、インダイ・エスピナ・ヴァロナ氏)

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