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1月8日のまにら新聞から

踊らされる指導者たち

[ 700字|2007.1.8|社会 (society)|新聞論調 ]

米兵移送と比米関係

 レイプ事件で終身刑の一審判決を受けた米海兵隊上等兵のスミス被告の身柄移送に関して、アロヨ大統領は「難しい決定」を強調し、国民に理解を求めた。米政府は、比施設での収監を決めたマカティ地裁判決が訪問米軍地位協定(VFA)に違反すると反発、大統領は対米関係の悪化を回避する措置だったと弁明した。

 ずいぶんな頼み事である。第一に、凶悪犯罪で有罪判決を受けた同被告が比人被告に与えられない権利・待遇を受けている点は理解し難い。比政府は地裁判決を無視し、控訴裁判決を待たずに、同被告を米大使館へ移送した。法の支配が守られているかは疑問だ。

 第二に、対米関係に神経をとがらせる比政府とは対照的に、米政府は対比関係よりも米兵の権利を守ることに比重を置く。対米関係修復へと動いた政府の早すぎる姿勢は理解に苦しむ。

 ファロン米太平洋軍司令官はスミス被告の身柄問題解決を強く求め、二月の合同軍事演習「バリカタン07」の中止を発表。加えて、台風被災地に派遣していた米軍の撤退も指示した。同司令官だけでなく、アポストル大統領府顧問も対キューバ政策を例に挙げ、比が経済封鎖の対象になるのではと、圧力を強めた。妄想の域を脱してはいないが、比閣僚に取りつく「白人の父」への恐怖を表している。

 移送完了後に米政府が演習中止撤回を宣言した際の比側の反応は、親が奏でる音楽に合わせて踊る子供と同じ。

 比米関係は互いの尊敬と利害を共にする成熟した関係ではない。米国の指示に従って比人が実行を急ぐ構図は、植民地時代の主従関係と同じだ。米兵が比人女性を性的搾取の対象としてしか見ていないことにも驚きはない。(4日・インクワイアラー)

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