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10月23日のまにら新聞から

不衛生な医療施設

[ 691字|2006.10.23|社会 (society)|新聞論調 ]

問われる比の医療制度

 首都圏近郊を直撃した台風ミレニオ(15号)の影響で、新生児七人が死亡したことを受け、首都圏パシッグ市内にある医療センターの職員五人が取り調べを受けている。

 十月四日に公立病院で誕生した赤ん坊二十八人のうち、十二人が敗血症を引き起こした。不衛生な環境が原因で七人が感染症で死亡した。病院側は「台風の影響で続いた停電と断水が不衛生な状態を引き起こした」と説明した。

 調査結果がどうあれ、この悲劇は、公的医療制度が極度に不十分であることを浮き彫りにした。首都圏での公立病院が患者で過密状態になり、停電に対応できる自家発電機を完備していないとすれば、地方の医療施設の状況は一体どうなっているのだろうか。

 地方では医薬品や医療機器が不足しているが、施設を利用できる国民はまだ幸運だ。多くの地域では、緊急事態や、幼児の主要な死因になっている下痢にすら対応できない。重い病気にかかれば、首都圏の病院で治療が必要だが、国民の多くはそうした治療を受けられない。

 さらに医師や看護師の海外流出で国内の病院は閉鎖を余儀なくされ、事態はさらに悪化の一途をたどっている。世界中で医療従事者の不足が深刻化している。裕福な国は、その不足を補うため海外からの医療専門家を受け入れることが可能だが、フィリピンのような途上国は無理だ。毎年、医療専門学校の卒業生は増加しているが、多くはこの国を去ってしまう。

 医師、看護師、医薬品、おまけに衛生環境を保つ清潔な水が不足すれば、国内の医療施設で適切な治療を行うことができない。幼児七人は、不十分な医療サービスで死亡した最近の例にすぎない。 (19日・スター)

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