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6月19日のまにら新聞から

上院の存在意義

[ 672字|2006.6.19|社会 (society)|新聞論調 ]

一院制移行の危険性

 議会による国家予算案可決の失敗で再び、上院廃止・一院制への移行の声が高まった。一院制主義者は一院に移行することで政情不安も収まり、法的手続の迅速化が国民に利益をもたらすと主張する。

 しかし、特に独裁主義の傾向がみられる現状では、上院は閣僚を監視する役割を担っているとわれわれは信じる。国民は、政治に長けた大統領が弾劾の動きを封じ、自分の個人的利益のための予算案を通過させるなど、下院を思いのままに操れることを知っているだろう。上院なしの一院制では、一体誰が閣僚たちを監視するのか。

 頑強なローマ帝国の制度を手本とした米国は上院を置き、比でもこれにならい、一院制を一定の時期に試した後、二院制に移行した。比では若い下院議員は地域別に選出され、より少数派の有権者の声をくみ取ることができる。一方、上院は政治に熟達し、国民全体をとらえる広い視野を持つ国の代表として全国規模で選出される。地域・民族間で分裂したわが国では、多様な地域の人々の声をくみ取る必要があり、多くの議員や委員会、専門家で構成される二院制議会は権力を分散させ、国民の見識や願望を政治により細かく反映させることができる。

 さらに、二院制では上・下両院での議論や公聴会が頻繁に開かれ、法案可決に時間をかけることができる。議員にとって、議会で反対意見を聞かされることは違った視点を学ぶ機会となる。

 一院制は国を良くできない独断的な大統領の形式的承認システムになりかねないからだ。議会には監視機関として、強く、独自の考えを確立した上院が必要なのである。(15日・インクワイアラー)

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